menu

 

山口県山口市の耳鼻咽喉科かめやまクリニック

アレルギー性鼻炎解説サイト

対策について

薬の使い方について

アレルギー性鼻炎と薬の関係
 〜薬で根治はしないことを理解する〜

一口に抗アレルギー薬といってもたくさんの種類があります。

具体的には、

  • ケミカルメディエータ―遊離抑制薬
  • ケミカルメディエータ―受容体拮抗薬
  • TH2サイトカイン阻害薬
  • ステロイド薬

などに分類されます。

ケミカルメディエータ―受容体拮抗薬はさらに

  • 抗ヒスタミン薬
  • 抗ロイコトリエン薬
  • 抗プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2薬

の3種類に分けられます。

これらはそれぞれ作用機序が異なり、アレルギー性鼻炎に対する効果も異なります。
そこで、これらの薬を適切に選択したり、または組み合わせたりすることで、かなり症状をコントロールすることができます。

重要な点は
症状に合った薬を使う

ということです。

おなじアレルギー性鼻炎であっても

  • 鼻水が主体なのか?
  • 鼻づまりが主体なのか?
  • かゆみが問題なのか?

などの症状の違いと鼻の中の所見とから
どの薬の選択、または組み合わせが最も適当かを考えていきます。

症状によって異なる薬の使い分け

上記の抗アレルギー剤の中で、
最も多く使われるのが抗ヒスタミン薬です。

抗ヒスタミン薬はアレルギーの症状を全般的に抑えますが、中でもヒスタミンという物質が関与する症状を強く抑えてくれます。アレルギーのメカニズムのところで、肥満細胞から放出される化学伝達物質のなかにヒスタミンというものがあるという説明を書きました。このヒスタミンが、かゆみや鼻水の症状を引き起こす主体になります。そこで、ヒスタミンの働きを抑える抗ヒスタミン薬を飲むと、かゆみや鼻水の症状が改善されるのです。その一方で、抗ヒスタミン薬には、共通する欠点として「眠気」が起こりやすいという問題があります。

抗ヒスタミン薬は、開発された時期の違いで、第一世代、第二世代の2つに分けられます。
第一世代の抗ヒスタミン薬は、眠気が強く口が渇く、という副作用が強かったため、その後、これらの副作用を軽減させた抗ヒスタミン薬が次々と開発されました。これらが第二世代の抗ヒスタミン薬です。

一方、鼻づまりが強い、という場合には

  • 抗ロイコトリエン薬
  • 抗プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2薬

などが効果があるとされています。
そこで両者(鼻水・鼻づまり・くしゃみ)のすべての
症状がひどいという最重症の方に対しては

抗ヒスタミン薬 と 抗ロイコトリエン薬

の併用などが行われます。

(⇒抗アレルギー薬の比較表)


ステロイド薬は、前述の抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬とは、全く別の機序で、アレルギー反応による症状を強く抑えます。実際のところ、単にアレルギー症状を抑える効果だけを考えると、ステロイド薬は、上に上げた薬剤の中で最も効果が高い薬剤であるといえます。その一方で、ステロイドは、抗アレルギー効果以外に様々な作用を人体に引き起こし、それらの作用の多くは人体に有害な副作用となります。具体的には、「糖尿病」、「高血圧」、「骨粗しょう症」、「皮膚障害」、「月経異常」、「副腎皮質機能低下」等々全身に及ぶ病気や症状を引き起こしたり、感染症にかかりやすくなったりします。

ステロイドの副作用は、ステロイドの種類と投与方法によって、かなり異なります。
投与方法としては、内服薬(飲み薬)、注射、局所投与の3つに分かれます。

ステロイド注射

デポステロイドという薬剤を注射する治療があります。これは、スギ花粉症などでシーズン前に1回だけ注射すればよいという治療で、簡便でありかつ非常に効果的です。しかし、前述のステロイドの副作用が最も強く現れやすい治療でもあります。
鼻アレルギーガイドラインでは、このデポステロイド注射の治療は、「望ましくない治療」とされ、もしどうしても行う場合は、全身性の副作用に注意し必ず投与前後の検査を行うこととしています。
現在は、アレルギー性鼻炎に対する治療の選択肢も数多くあり、危険を犯してステロイド注射を行う意義は少ないという考えから、かめやまクリニックでは、この治療は行っておりません。

ステロイド内服薬

内服薬においても注射と同じく、副作用は出現しえます。しかし、量と期間に注意すれば、デポステロイド注射ほどの危険はないので、どうしても他の治療でコントロールし得ない重症例では用いられる場合もあります。
アレルギー性鼻炎に用いられるステロイド剤としては、抗ヒスタミン薬とステロイドの合剤であるセレスタミンという薬剤がよく用いられます。セレスタミンに含まれるのは、ベタメタゾンというステロイドで、かなり強い作用を持っています。
鼻アレルギーガイドラインでは、内服のステロイドを使う場合には、プレドニゾロンというステロイド剤で1日当たり20〜30mgの使用で、期間は1週間以内に留めるのが望ましいとされています。プレドニゾロンで1日当たり20〜30mgという量は、前述のセレスタミンに当てはめると、1日1〜2錠となります。
ステロイド剤の内服は、糖尿病の方や急性感染症をおこしている方では禁忌となります。また、ウィルス性肝炎のキャリアの方は、ステロイドの内服を行うと、肝炎が急激に悪化する場合があるので注意が必要です。

ステロイド点鼻薬(鼻噴霧用ステロイド薬)

これまで、ステロイドの副作用のことを強調して、なるべく使わない方がよいと書いてきました。しかし、ステロイドの鼻噴霧剤については、鼻アレルギー治療ガイドラインでも、むしろ重症例の第一選択剤として推奨されています。これは、ステロイドの強い抗炎症効果が得られる一方で、前述の全身的な副作用があまり問題にならなくなるからです。特に最近になって新しく出てきた1日1回噴霧するタイプのステロイド剤は、微量で局所効果が強い一方で、体内に吸収されにくく、吸収されてもすぎに分解されるため全身性副作用がほとんど出ないとされています。

また、最近では、この鼻噴霧ステロイド剤を単独でスギ花粉症の初期療法として使用した場合の効果が検討され、内服薬による初期療法に勝るとも劣らない効果がみられたとされる報告が出ています。

初期療法:重症のスギ花粉症の方の場合、花粉が飛び始める前から薬剤を使い始める方がよいとされ、この花粉飛散前の治療のことを初期療法といいます。一般には、シーズン中に使うのと同じ薬剤を、症状が出始める前から内服し始める治療を行いますが、上述のように、最近では鼻噴霧ステロイド薬で代用する試みもなされています。

ただし、鼻噴霧用ステロイドにも、全く副作用がないわけではありません。
鼻噴霧用ステロイドの副作用として、軽度の鼻内刺激感、乾燥感、鼻灼熱感、鼻出血などがあります。また、使用感の好みもあり、鼻に薬剤を噴霧すること自体が不快で使いにくいという方もおられます。
鼻噴霧用ステロイドの剤型としては、液体のものとパウダー状のものとの2種類があります。

ステロイドについてまとめると以下のようになります。

  1. 鼻噴霧用ステロイドは、効果が高く副作用が少なく、現時点では理想的な治療といえる。
  2. 他の治療で改善し難い場合、ステロイドの内服薬が用いられることもあるが、量と使用期間(1週間以内)に注意する必要がある。
  3. また、糖尿病などの方やウィルス性肝炎のキャリアの方は、ステロイドの内服は禁忌である。
  4. ステロイドの注射は、花粉症を含むアレルギー性鼻炎に対しては原則として行うべきでない。